増えたのは顧客数ではなく、リンクのクリック率
DavietとNishimuraの研究で、広告の配信結果をもとに調整したAIは、平均リンククリック率(CTR)0.98%を記録しました。美しさを重視して最適化したAIは0.78%、プロのデザイナーは0.65%です。研究は2026年5月5日、Marketing Scienceでオンライン公開されました。
CTRは、広告の表示回数に対してリンクがクリックされた割合です。ここでは素材ごとに算出したCTRを平均しています。0.98%と0.65%の差は0.33パーセントポイント。デザイナーの値を基準にすると約51%高い計算ですが、顧客が51%増えたと示した数字ではありません。売上や利益率の増加も、この比較では確認されていません。
Daviet・Nishimura、Marketing Science、2026年、表2・3。出典確認日:2026年11月1日。比較対象は一社の広告背景と、一人のデザイナー
実験は、アウトドア活動を提供する一社のInstagram広告で行われました。学習後に3グループ各10点の素材を同時に1週間配信し、背景画像を比較したものです。一人のデザイナーとの結果を、デザイナー全般の能力評価に広げることはできません。
また、どの広告をどう配信するかにはプラットフォームも関わります。AIだけの因果効果を切り分けた実験ではない点も、数字を読む際に外せません。
Daviet・Nishimura、Marketing Science、2026年、表2・3。出典確認日:2026年11月1日。再テストでも優位だった、とは言えない
別のテストでは、AIの平均CTRが3.38%、比較対象となった企業の社内チームが3.24%でした。この差は統計的に有意ではありません(片側検定のp値 = 0.323)。AIの優位性は示されておらず、両者の効果が同じだと証明されたわけでもありません。
実施国、比較全体の表示回数、最終比較の正確な日付は明確ではありません。再テストの時期に関する記述にも食い違いがあり、効果がどれだけ長く続くかを判断する根拠にはできません。
予算の前に、何を成果とするかを決める
中小企業がこの研究から得られるのは、自社で検討する価値のある選択肢です。問い合わせの質を高めたいのか、注文を増やしたいのか。その目的に合う相手へ、ブランドにふさわしいメッセージが届かなければ、クリック数だけでは広告の価値を判断できません。
画像の制作費が下がっても、確認や修正、広告枠の購入には費用がかかります。安く作れることと、事業として採算が合うことは別です。チームの置き換えや予算増を急がず、課題と評価する成果を先に明確にする。そのための材料として読むのが適切です。
Daviet・Nishimura、Marketing Science、2026年、表2・3。出典確認日:2026年11月1日。MindVerveの診断では、優先する用途と最初のパイロットを評価する基準づくりを支援します。対象は目的と範囲の整理です。パイロットの実施、広告運用、公開は含みません。まずは、解決したい課題をお聞かせください。
自社に合うAI活用を整理する